【連載】二日酔いピカレスク ~アルコールに咲く徒花①~
ガラケーの淡い思い出
その日、私はしたたかに酔っぱらっていた。
幼なじみのヒロと2人で3軒ほど飲み歩いたか。
「そろそろナンパでもすっか。」
お決まりのコースである。
その街は老舗の劇場やライブハウス、古着屋、雑貨屋、個性的な飲食店などが雑然と軒を連ね、そのせいもあってかサブカル的な雰囲気が色濃く漂う、老若男女に愛される街だ。
「行きますか。」
ほどよくアルコールの入った2人は歩き出す。
駅南口を時計回りに、ときには反時計回りに、目を皿のようにして獲物を探す。
前方から少し派手な2人組が携帯(当時、スマホはまだ存在しない)をいじりながら向かってきている。
普段はあまり怖そうではない(=ギャル風ではない)2人組に声をかけるのが常なのだが、その日は既に3軒ハシゴをしているため、怖いもの知らずというか、気が大きくなっていた。
「あれ、行ってくるわ。」
「え?マジ?怖そうだけど。。」
「いや、行けるっしょ。」
「すみませーん、一緒に飲みに行きませんか~?」
「圏外。」(携帯ポチポチ)
「え?電波ないですか?」
一瞬首をかしげる。
ここは屋外。確かにゴチャゴチャとした街だが、電波を妨害するほどの建物はない。
何事もなかったように立ち去る2人。
そこでやっと理解が追いつく。
圏外なのは携帯ではなく、私のことであったと。
またやってしまった。
ナゼ無駄に傷つくようなことを自らしてしまったのだろう。
ここで勢いは完全に削がれている。
「もう1件行って仕切り直そうぜ。。。」
4軒目である。
無駄なアルコールとはこのことを言う。
店を出たときには既にベロベロだが、懲りずにまた狩りに出る。
1組目、2組目、3組目、4組目。。
全て空振り。
当然だ。誰が好き好んで泥酔したナンパ野郎についていくだろうか。
「よし!あれもいこう!」
「いやいやおまそれ!ちょ、まっ!」
ヒロの制止も聞かず特攻する私。
既に視界は0に近い。
もちろん玉砕。
「いやお前、その娘たちさっきそこで声掛けてるから!」
なるほど。一度断られていたわけか。
道理で目も合わせてくれないわけだ。
「よし、帰ろうか。」
「そうだな。」
ウコン皇子、若き青春の1ページであった。
むろん、翌日が壮絶な二日酔いだったのは言うまでもない。