【連載】二日酔いピカレスク ~アルコールに咲く徒花⑤~
酒呑み四天王
学生時代の思い出の続き。
ある日、『ダイ』という1個下の後輩が言ってきた。
「ウコン皇子さん、俺らん中で一番酒強いらしいじゃないですか。〇〇(←学校の名前)四天王とかって呼ばれちゃって。ちょっと俺と勝負してくださいよ。」
まるで意味が分からない。
なぜコイツと勝負?をしなくてはならないのか。
と一瞬思ったものの、なにせ私も若かった。
酒が強ければそれだけで存在感を出せた。
そんなくだらなくも楽しい世界にいた。
「おーやったろうやないけ」
ということで、19時までビールが1杯90円のいきつけに行く。
学生は得てしてみな貧乏である。
クオリティなどは気にしない。
勝負の行方
初手はビールから入り、次々と杯を重ねていく。
冬だったこともあり、熱燗勝負へ。
マズイ。これは危険な流れだ。
ダイは次第に呂律が回らなくなりながらも強気の発言を続ける。
「いや俺、まだまだれんれん(全然)っスよ~。ウコン皇子さんそんら(な)もんですか~?俺四天王なっちゃいますよ~。」
どうぞ。
かくして2時間は経過しただろうか。
ろくに食いもせず、ただひたすら徳利を空にした。
一体二人で何合空けたのだろう。
さすがに私も酔っていた。
「ダイ、もう俺の負けでいいから、そろそろ行こうやー」
「えーいいんしゅかー!やったー俺の勝ちっスよーーー!」
「おっけ、負けたよ。いこいこ。」
会計を済ます私。
先に外に出るダイ。
その店は地下で、階段がらせん状になっており上が見えない。
「あれーダイもう上行ったのかー?」
上がっていく私。
突然視界に入る二本の足。
ダイだ。
「おい何やってんだ!大丈夫か!?」
イヤな予感がする。
頭のほうに行く。
ゲ●まみれである。
そう、自分のゲ●で滑ってコケているのだ。
しかも酩酊状態でとても自力では歩けない。
やむを得ず近くにいた仲間を呼び寄せ、なんとか事なきを得たのだった。
ダイよ、あとのき君は、間違いなくTOPオブ四天王だった。
その後、ダイが挑んでくることは二度となかったのは言うまでもない。
おわり